珍しく戦争モノを観ました。アレクサンダー・スカルスガルドが出ているからですが、完全実話のドキュメンタリー風という点が決め手でした。
想像以上に面白く、やめられなくて、あっという間に観てしまいました。実話の群像劇です。
10年目に、オーディションの苦労を振り返ってのインタビュー
イラク戦争の最初期を描いたこのHBOドラマ(全7回)、2008年の作品ですが、2018年の動画配信スタート(amazon prime video配信中)をきっかけに公式HPにインタビューが掲載されたようです。HBOの衝撃作「ビッグ・リトル・ライズ」の翌年ですね。よく知られた内容かもしれませんが、備忘録としてまとめてみます。
DVD・ブルーレイの日本版公式もあります。戦争用語や時代背景についてはこちらをご参照ください。
斜め読みですが(素人なので誤訳ありそう御免なさい)、インタビューで面白かったのは、このドラマがキャリアのターニングポイントだったということ。この次がHBO「トゥルーブラッド」になります。
アレクサンダー・スカルスガルドは1976年生まれ。父はご存知ステラン・スカルスガルド。母国スウェーデンではすでに映画やドラマに出演していましたが、アメリカでは小さな役ばかりでした。
で、このドラマのオーディションについて語っています。
仕事は無く、もちろんお金も無くてビザは切れる寸前で、これがだめだったら帰国しようと思っていたそうです。そんな時期があったのですね。撮影時30歳前後でしょうか。
プロデューサーや監督がいるNY→ロンドン→ボルチモア→NYとオーディションが続き、電話が鳴るたびに心臓が止まりそうになったらしい。が、ようやく合格。長くてタフなオーディションだったそうです。最後はキャスティングディレクターが皆を説得してくれたといいます。
知らせを聞いたときは、人生で一番クレイジーな瞬間だったそうです。そして決定翌日にロケ地であるナミビアへ出発するというスケジュールでした。
で、同じくHBO公式HPに、この時のキャスティング・ディレクター、アレクサ・フォーゲル(Alexa Fogel)さんのインタビューも公開されていました! さまざまな番組のキャスティングについて語っています。
「アレクサンダー・スカルスガルドがこの役につけなかったら、もうキャスティング・ディレクターは出来ない」と思ったほど、最も難しくチャレンジングなキャスティングだったそうです。
最後の一秒までハラハラしたと語っていました。
アレクサさん、「Oz」「ザ・ワイヤー」「ザ・デュース」などを手掛けた敏腕キャスティング・ディレクターで、「ザ・ワイヤー」「ジェネレーション・キル」の製作者デビッド・サイモンとよく一緒に仕事をしている人。
アレックスとはこのオーディションで知り合い、とてもいい友人になったそうです。
オーディションの交通費はきっと自腹だよな・・・などと想像してしまいました。大変なお仕事ですね。
実在の人物を演じたリアルなドラマ
このドラマでは、実在のブラッド・コルバート軍曹役。通称“アイスマン”。
無名のスウェーデン人をキャスティングするのは勇気がいったと思うよ的に話していますが、軍隊経験アリですからね。
当時のスウェーデンには兵役があったので、2年間、他の記事によるとアメリカ海兵隊と同じような位置づけの軍隊にいたそうです。最近、兵役復活のニュースがあったなと思って調べたら、2010年に徴兵制廃止、2018年に復活していました(18歳以上の男女)。
スウェーデンは何百年もロシアと対峙しているスカンジナビアの大国です。個人的にはスイスに近いイメージでして、中立国かつ防衛には徹底してシビアな国という印象です。(あくまで素人のイメージです)
インタビューに戻ると、そんな軍隊経験者として、階級制度や仲間意識や情報不足などの問題点含めてすべてがリアルだったと話しています。作品については、センセーショナルな事件やヒロイックな行動にフォーカスした作りではなく、毎日をリアルに率直に描写していると感じたそうです。
ナミビアでのロケは何と7か月。実際の軍隊のように、全員が一緒に砂漠で生活していたらしく、LAで撮影して毎日家に帰っていたら違う雰囲気だったかもね、とのことでした。確かにあの一体感は出なかったかもしれません。
上のInstagramにもあるように、これまでで最も大きな冒険の一つだったのは間違いないでしょう。
また、特定のヒーローがいるわけではない群像劇なので、40人全員がエキストラでもあったそうです。誰かのシーンの後ろを歩いたりしているらしい。
原作は、軍に同行した「ローリング・ストーン」誌の記者エヴァン・ライトによるベストセラー。長時間にわたる取材メモ、録音があったので、ブラッド・コルバートのインタビューもすべて聞いたそうです。
そして、彼がなぜ “アイスマン” と呼ばれているかよく理解できた瞬間があった、と語っています。
戦闘中の録音で、大変な銃撃を受け、弾丸が車体に当たり跳ね返る音が響き、何名もの兵士が叫んでいるにもかかわらず、極めて的確、冷静に指示を出していたそうです。彼の声はとても穏やか(so calm)で、心拍数がゆっくりになっているように感じた、といいます。
もちろん生身の人間ですから、欠点もありリアルなプライベートのある人物像を作っていったそうです。
Wikipediaによると、ブラッド・コルバート氏は現在、退役し講演活動などを通じて退役軍人の心身の問題に取り組んでいるみたいです。尊敬される軍人のひとりなのでしょう。撮影前に会ったことはなく、でもその後2人そろっての写真をどこかで見たことがあります。アレックスは「メイジーの瞳」のリンカーン的ルックスだったので(つまり「ジェネレーション・キル」とは真逆)、いつの何の時の写真だかは不明です。
(追記●「ジェネレーション・キル」のイベントだったみたいです。アレクサンダー・スカルスガルドは髪がのびてTシャツでした)
インタビューでは最後に、ブラッド・コルバートのキャラクターを最も的確に表現するのは、劇中使われている “Stay Frosty” (常に冷静に)であり、今も大切にしているフレーズだと語っていました。
次回、作品全体の感想です。こんなに引き込まれるとは思いませんでした。異色の、でも名作ドラマだと思います。