カノンの海外ドラマ漂流記

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映画「グッバイ、レーニン!」感想 ~ 笑えてちょっとほろ苦い、優しい嘘が愛おしい名作でした!

ドラマ「エイリアニスト」ファンとしては、見逃していたダニエル・ブリュール作品を見なくてはと視聴しました。amazon prime vieo配信中です。

good bye lenin!

2003年公開のドイツ映画「グッバイ、レーニン!です。世界中でたくさんの賞を受賞したヒット作。

 

面白かったです! 2時間1分という長さがあっという間でした。哀愁あふれる(または重たい)東ドイツ→統一ドイツの人間ドラマかと思っていたら、全然違う味わいの作品でした。

 

東ドイツ時代のコメディのようでいて、家族の再生の物語であり、社会風刺にもなっている名作です。ユーモアと優しさに包まれる後味が素敵でした。

 

 

時は1989年、東ドイツ人青年アレックスがダニエル・ブリュール

熱心な党員だった母が心臓発作で倒れ、昏睡状態になっている間にベルリンの壁が崩壊。母は目覚めますが、「刺激を与えないように」という医師の指示に従って、以前通りの生活を再現=嘘をつき通す四苦八苦がコメディタッチで描かれます。

母親クリスティアーネ役カトリーン・ザースと。

 

前半はコメディ、後半はちょっとしんみりの心温まる爽やかな映画

 

好物の瓶詰ピクルスが食べたいという母ですが、西側諸国の商品がなだれ込んだスーパーに東ドイツ製品は残っていません。アレックスは、空き瓶を探して町中走り回り、中身を詰め替えます。

 

子供達にアルバイト代を渡して社会主義の歌を合唱させたり、コカ・コーラの宣伝を見られた時にはニュース番組を捏造し、コカ・コーラは50年代に東ドイツで開発されたと流したり。

 

社会主義のブラックコメディかと思えるおかしさですが、もちろんそれだけじゃありません。

逆に、資本主義の競争社会や格差や問題点が浮かび上がってくる構造にもなっていて、やっぱり社会体制に関係なく人としての優しさが大事なんだなと思えてきます。

公開時、25歳のダニエル・ブリュール。一生懸命なんだけど、どこかずれてておかしいユーモラスな演技が最高です! この一作で世界的に知られるようになったことに納得。

写真は、恋人ララ役のチュルパン・ハマートヴァと。

 

1989年11月9日ベルリンの壁崩壊をはじめ、1990年のサッカーW杯(ドイツ優勝)など実際の映像もはさまれて臨場感が増します。

Wikipediaより

今でこそ遠い昔のニュース映像ですが、懐かしいという感覚でなく、当時よりリアルに感じてしまいました。

実際の映像が流れる度に、こういう普通の生活をしている人達だったんだと怖さが増してくるから映像の記憶って不思議です。

ベルリンの壁崩壊から約10年後に作られた映画ということになりますね。

 

ところで、少し回復した母親はひとりで外に出て行ってこれまでと変わった風景に戸惑います。ちょうど、解体されたレーニン像がヘリコプターで運ばれていくところを見てしまいました。

迫力でした! フェリーニ甘い生活」のキリスト像を思い出させる演出ですね。

 

Wikipediaによると、実際には解体されただけでヘリで運ばれたわけではなかったようですが、各地で像が破壊される映像がよく報道されましたね。

この作品でも、ホーネッカーやゴルバチョフが何度もニュースに登場しました。

 

愛するがゆえの優しい嘘がいっぱい! ラストは母親も・・・

 

Daniel Brühl

ダニエル・ブリュール Daniel_Brühl です。こちらでもご紹介したように、1978年6月16日生まれ。ドイツ・ケルンで育ちました。

 

アレックスの子供の頃の夢は宇宙飛行士。今は衛星放送のサービス会社で働いています。そして今はもう無い「東ドイツ」のままだと母に思わせる嘘のために努力します。

 

もちろん段々とうまく行かなくなり、本人も周囲も疲弊してしまうのですが、母親の命がかかっていると思い込んでますから、あきらめるわけにいきません。

この純真な真っすぐさゆえに困難が降りかかってしまうわけです。

 

こちらはアレックスの恋人ララ役、チュルパン・ハマートヴァロシア連邦タタールスタン共和国出身だそうです。母が入院した病院の看護師でソ連人という設定。

とっても可愛い人でした。アレックスの支えになりますが、徐々に、本当のことを話すべきだとすすめるようになります。母親の二度目の入院中、東西ドイツのことを母に話しました。

 

アレックスの姉アリアネ役マリア・シモンはドイツの女優。

大学で経済学を学んでいたシングルマザー。ベルリンの壁崩壊後は退学して西側のバーガーキングで働き始めます。

西ドイツ人の恋人といっしょにアレックス達と同居して子育てをすることになりました。当初は弟に協力しますが、二人目の妊娠、行方不明の父に(バーガーキングで)会ったことから心境の変化が訪れます。

こちらは、アレックスの同僚で西ドイツ人デニス役のフロリアン・ルーカス。

映画オタクでアレックスに協力して多くの “東ドイツ製” ニュース番組を作ります。アレックスとのかみ合わない映画談義がコミカル。最後の大一番まで協力してくれるいい味だしてる俳優さん。

 

空飛ぶレーニン像を見てしまったママはカトリーン・ザース

1956年、旧東ドイツ出身。東ドイツ時代から映画や舞台で活躍していました。

 

夫が西ドイツの愛人のもとに走ったため病気となり、回復後は社会主義活動に没頭します。息子を反体制デモで見かけ(アレックスはたまたま巻き込まれただけですが)ショックで倒れます。目覚めて「買い物中に倒れた」と伝えたのがアレックスの最初の嘘でした。

 

が、夫のことは嘘だったと子供達に告白します。自由を求めて亡命した、あとから来るように言われたが怖くてとても行けなかったのだと。

 

その夫、アレックス達の父親ローベルト役はブルクハルト・クラウスナー。

ベルリン・シャルロッテンブルク出身。ドイツ映画界の重鎮のようです。最近では「ザ・クラウン」にも出演。

 

西ドイツに亡命した医師ローベルトは、3年間家族を待っていたといいます。しかし結局あきらめて再婚していました。

最後にもう一度だけ夫に会いたいという母の願いを叶えるため、アレックスは父を探して病院に連れて来ることに成功します。

 

 

実は、父親と母親が二人きりで何を話したかは明かされません。あくまでアレックス目線の映画です。

 

アレックスとデニスは、最後のニュースを制作します。東ドイツは、競争社会に疲れた西ドイツ難民を受け入れており、共存するために国境を開放するという内容でした。

スピーチしたのは、新たな国家評議会議長にして元宇宙飛行士(アレックスの憧れだった)ジークムント・イェーン。失業し、タクシードライバーになっていたイェーンに制服を着せて図書館で撮影したものでした。

↑本物のイェーン宇宙飛行士。東ドイツ初の宇宙飛行士で、実際はずっと宇宙開発プロジェクトに携わっていました。

 

こうして嘘を終わらせたアレックス。もう泣きそうでした。

 

嘘のニュースのスピーチも素晴らしくて、さらに放映中ずっと息子を見つめている母親が何とも言えない表情。

ララから聞いてましたからね、ママは嘘だということは分かっていたはず。それでも自分を気遣ってくれる息子が愛おしかったのでしょう。だまされたままです。

結局、何も言わないまま亡くなります。

 

 

tragic comedyと紹介されることが多いみたいで、実際の東ドイツの人たちはどんな困難を経験したのだろうと考えてしまいます。

優しくて可愛らしくてコミカルで、現実的には困った息子なんですけど、温かな抱きしめたくなる映画でした。