カノンの海外ドラマ漂流記

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映画「モーガン夫人の秘密」感想 ~ 敗戦直後の真面目なドラマ。ちょっとキャストが派手すぎた?

とても真面目なきちんとした美しい映画なんですが、果たしてキーラ・ナイトレイアレクサンダー・スカルスガルドである必要があったのか? と思った人はわりといたはず。

いえ、この2人目当てで見たんですけども。

キーラ・ナイトレイ、35歳になりました。相変わらず綺麗だし上品だし成熟した大人の佇まいがとても美しいです!

第二次大戦直後、ドイツに赴任する英国軍大佐の妻レイチェル役

アレクサンダー・スカルスガルドドイツ人建築家ルバート役。敗戦直後のハンブルクに住んでいて、自宅を接収され(という使い方でいいのかな)、でも大佐の好意で大佐夫妻と同居します。

英国軍モーガン大佐ジェイソン・クラーク。この人ははまり役でした!

1969年オーストラリア出身のJason Clarke、「パブリック・エネミーズ」「ゼロ・ダーク・サーティ」「華麗なるギャツビー」「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」「セレニティー:平穏の海」最近では「悪魔はいつもそこに」などとてもたくさんの映画に出演。抑えた演技が真に迫っていて、味のある俳優さんでした。

 

原題は「The Aftermath」。戦争や災いの “余波“ を意味します

 

原作はウェールズの作家リディアン・ブルックの2013年の小説だそうです。映画は英独合作で2019年公開(日本では劇場未公開)。

 

原題「The Aftermath」、ドイツでは「Niemandsland(=No Man's Land)」と戦争の影響が濃いのですが、邦題は恋愛映画ですね・・・。しかも不倫もの。

 

舞台は1946年のハンブルクです。

街はまだまだ瓦礫の山で、連合国側は街の復興に躍起になってる時期。同時に、何としても非ナチ化を進めなくてはいけない難しい時期。

いまだナチスの残党やヒトラーに忠誠を誓う(人狼部隊の生き残りらしい)貧しい難民たちが抵抗しています。ナチスでなくても雪の中、飢えた子供達が厳しい生活を強いられている。

 

そんなシーンに手を抜いていないのはよかった。ドイツの戦後を感じることができました。ナチスかどうかの調査も徹底して行っていたみたいですね。

 

ドイツ軍の爆撃で幼い息子を亡くしたモーガン夫妻。大佐は哀しみを忘れようと任務に没頭します。妻は夫が向き合ってくれないのが悲しい。

ルバートは連合国軍の爆撃で妻を亡くし、10代の娘フリーダと2人暮らし。フリーダはヒトラーユーゲントに憧れる少年と仲良くなってしまう。

 

戦争によって大切な人を失った登場人物ばかりです。ただ、ちょっと中途半端かなという印象でした。

恋愛ネタの比重が定まらない感じというか。

パートナーのいない美男美女がいっしょに生活したら、そりゃそうなりますって。格好良すぎ、綺麗過ぎ。(ルバートはちょっと生活に疲れた感はありますけど。)

 

ラブシーンは美しいけど当たり前すぎて、話の先はすぐ読めてします。も少し実直な普通の人っぽいキャストのほうがリアリティがあったんじゃないかと思ってしまったわけです。というか、そういうキャラ設定。

 

だって障害を乗り越えてのラブロマンス、じゃないから。

少なくともそういう必然性は感じられず、といって戦争と復興にフォーカスしたわけでもなく、レイチェルが寂しさから恋愛にすがってしまったほどでもなく、ちょっと散漫な感じです。


そもそもは戦争によって狂った人間関係を見つめ直すテーマでしょうから、恋愛はその一要素として思い出に閉じ込めるだけでよかったです。今回は。

 

最後は予想通り、レイチェルは夫とやり直します。

職務と家族の両方で苦しい思いをしている大佐だけを主役に、もっとフォーカスしてよかったんじゃ、などと勝手なことを思ってしまいました。

ヨーロッパの人にとって、ナチスの悪夢とドイツが立ち直る過程はきっと今もとても大きいでしょうから。

 

ファッションとインテリアは楽しい♪

あ、でもキーラ・ナイトレイは美しいです! ドレスやコートや手袋などなど見ているだけで楽しかった。占領部隊の大佐夫人て特権階級ですものね。(大佐はほとんど軍服です)

 

そしてルバート邸に見とれました!
元はクラシックなんだけどバウハウスの影響を受けたインテリアのミックスマッチがさすが建築家。最初はミース・ファンデル・ローエのシェーズラウンジが醜い、とレイチェルが言うんですけど。

クラシックな建築とモダンな家具が程よく調和していて、きっと詳しい人が見たらいろんな発見がありそうです。

 

それから印象的だったのは、ルバート邸にはスタインウェイの故郷ハンブルクらしく美しいグランドピアノがありました。ルバート夫人のものだったのですが、レイチェルとフリーダが「月の光」を弾きます。
いちばん素敵なシーンだったかも。

 

ルバートは建築家でしたが今は職を失って工場で働いている設定なので、ふだんはラフな格好が多いです。そしてセーターが似合うんです。

↓でやってる事はともかく(気恥ずかしいけど)白いセーターが似合う! メンズが素肌にセーターだったら、肩幅ないとね。(もちろん見た目。実際は寒いからいっぱい着てますとも)

ネクタイにコートはふつうに素敵です。

 

最後に。

「ライン・オブ・デューティ」のスティーブ・アーノット君が出てました。事前情報無しだったのでビックリ!

マーティン・コムストン、英国情報部の将校役。酒癖の悪い、ちょっと意地悪な奴です。

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