カノンの海外ドラマ漂流記

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hulu ドラマ「メディチ」シーズン1 Ep5「誘惑」TEMPTATION 感想

今回の舞台は亡命先のヴェネツィア。貴族と市民両方から代表が選ばれる、フィレンツェとは異なる政治システムのヴェネツィア共和国。

コジモ・デ・メディチ(リチャード・マッデン)とその父ジョヴァンニ(ダスティン・ホフマン)から始まった物語「MEDICI: MASTERS OF FLORENCE」も中盤です。 

 

前回、家族それぞれあちこちに追放されましたが、コジモは弟ロレンツォ(スチュアート・マーティン)とヴェネツィアで合流し、帰還に向けて活動中です。

 

そこで出会いあり、権謀術数ありの第5回。

“誘惑”とはコジモ、コンテッシーナそれぞれのストーリーがあり、各キャラクターがからむ複数の交渉事があちこちで展開。フィレンツェに戻るためのミッションが描かれます。

 

 

各国の思惑が入り乱れ、裏をかいての陰謀合戦

 
 
 
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派手です! ヴェネツィア。シックなフィレンツェとは異なる色彩美の世界。一気に画面が明るくなりました。

左はキーパーソンであるドージェ(統領)フランチェスコ・フォスカリ(ジェームズ(ジム)マレー)。ヴェネツィア共和国、最盛期の元首です。

 

色んな“はかりごと”が同時進行するその背景は・・・

メディチ家(コジモ、ロレンツォ、ピエロ、ルクレツィア)はヴェネツィア在住。フィレンツェに帰りたい。

コンテッシーナは一人フィレンツェに残り(残され)政情不安ななか情報収集。

●海外貿易で潤うヴェネツィア共和国は、大企業メディチを手放したくない。投資や融資の便宜や情報、ネットワーク等々メリットがありそう。

フィレンツェ共和国では治安が悪化、アルビッツィの独裁政権への不満が高まる。ゴンファロニエーレ(行政長官)グァダーニとパッツィが思案中。

 

今回は、交渉事やだまし合いが多くて政治ミステリーの雰囲気が楽しめました

 

もちろん人によって手段や考え方はさまざまです。

 
 
 
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あくまで帰るための方策を考えるコジモの息子ピエロ(アレッサンドル・スペルドゥティ)に対し、「10年暮らすのなら溶け込まなくては」という妻ルクレツィア(ヴァレンティナ・ベレ)。あの可愛いカップルにも意見の食い違いが生じてしまいました。

 

ルクレツィアには、ドージェの息子ヤコポ(アンドレア・ファチネッティ)が誘惑を仕掛けます。実際、この困った息子のせいで父は失脚したみたいですが、ルクレツィアは大切なことを思い出すきっかけになりました。ちなみにヤコポ・フォスカリ役の俳優さん、オルネラ・ムーティの息子だそうです。

 

そのドージェ宅の食事会の写真がこちら。

ディナーや舞踏会など、ヴェネツィアの豪華さが楽しかったです。

 

さて。

●フィレンツェ(アルビッツィ)はコジモの追放をさらに延ばして20年にしてしまいます。フィレンツェとヴェネツィアは同盟関係でしたからメディチ家がヴェネツィア経由で交渉していたのに、です。

●コジモのいとこマリオ(ロレンツォ・バルドゥッチ)はミラノ公国と組んで、フィレンツェに進軍しようと勧めます。力づくです。ロレンツォも同調しますが、コジモは、ミラノに借りを作りフィレンツェとヴェネツィアを裏切ることは避けたい。感情的な弟と深謀遠慮な兄の会話でした。

●アルビッツィを攻めたいコジモは、アルビッツィ息子の婚約者を強引に引きはがしドージェの息子と縁組。経済効果や政治的意図をからめ、損得で交渉するシーン、パパに似てきましたね。

●ドージェのスパイを避けながら、マルコ(グイド・カプリーノ)にミラノを探らせていたコジモは、土壇場でドージェにミラノ×いとこの裏切りを伝え、交渉の道具にします。ただし、核心には触れない。いとこは本気でミラノと交渉したと思っていたはず。

●実は黒幕はミラノでなくドージェでした。コジモはそこまで分析した上で、フィレンツェ帰還への協力を要求します。これは断れませんね。交渉というより脅迫。

 

きっと史実はもっと複雑だったでしょうけど、伏線多数、探り合いや賄賂あり誘惑ありのスピーディな展開でした。

 

政治家として大成した、というか腹をくくったコジモだったと思います

 

あと印象的だったのは、コジモがヴェネツィアのサン・ジョルジョ・マッジョーレ修道院に建てた図書館の話。「慈善事業はフィレンツェ市民に伝わる」ってさすがにしたたかです。フィレンツェは財政破綻寸前でしたから。

キャラが分かる会話も細かかったですね。陰謀にからんでマルコが「反逆罪で処刑されたのはプラトンだっけ?」 コジモ「それはソクラテス」みたいなルネサンス的小噺?も楽しめました。

 

コンテッシーナの昔の恋人とコジモの愛人登場です💦

アルビッツィ(レックス・シャープネル)の息子の婚約を政治の道具にしたのは、妻コンテッシーナ(アナベル・スコーリー)の情報があったから。情報源は、再会した昔の恋人エツィオ・コンタリーニ(デビッド・スツルゼイカー)でした。アルビッツィ息子の婚約者はエツィオの姪だったのです。 

優しくて素敵なんですよ~、エツィオ。マントヴァの名家のお坊ちゃん。本来、勝ち気で快活なコンテッシーナにはこういう穏やかで包容力のある相手がいちばん。コジモだと頑固者どうしでぶつかりますものね。似たものどうしの設定だと思います。

 

100年待ってもコジモからは聞けそうにないウィットに富んだセリフや柔らかい物腰がいちいち新鮮。「君に起きたことは憎んだが君を憎んではいない」とか。心に刺さります。もしコジモと結婚する前にいっしょに逃げていたら、と毎日考えてしまったでしょう。

 

アルビッツィ、パッツィ(ダニエル・カルタジローン)らと同席した社交のシーンでも、スマートにエスコートしてくれました。

フィレンツェではどこに行っても針のむしろのコンテッシーナ。他家との付き合いを避けていましたが、エツィオの招待でパッツィ家のディナーに出かけます。そこで出会ったアルビッツィはコンテッシーナに皮肉を言いますが、もちろん気丈に乗り切ります。

また、アルビッツィ達がコンテッシーナの実家バルディ家は立派だった、とあくまで敵視しているのはメディチだということも改めて描かれました。

 

「今なら運命を変えられる」と言ってくれたエツィオ。きっと世界中の何百万人もの女性視聴者が、家出していいわよ! コンテッシーナ!! と思ったに違いありません。だってその頃コジモはヴェネツィアで新しい愛人と一緒でしたから。 

ドージェから贈られた奴隷のマッダレーナ。実際はコーカサス出身で、亡命より前にヴェネツィアかローマで出会って子供を産んだようです。

 

演じているのは、サラ・ヘルバーバウム。1980年ロンドン生まれ、イタリア育ち。アンニュイで不思議な雰囲気の女優さんでした。ルネサンス絵画から抜け出たような美しさです。

 

ドージェのスパイと見抜いていたコジモがそれでも惹かれた理由は、「美しさよりまず食べることが大事」とビアンカと同じことを言ったから。そして絵が好きだったから。コジモに遠近法を習った後、熱心に絵を描き続けるマッダレーナでした。

マッダレーナを心配したコジモはフィレンツェに連れて帰ることにします。帰還を望むフィレンツェ市民や関係諸国の声は熱烈で(ヴェネツィアの工作もあったでしょう)、一年で追放が解かれることになりました。(次回、再びフィレンツェが舞台となります。)

 

そして何と! パッツィとグァダーニ(ブライアン・コックス)がアルビッツィを逮捕。恐怖政治に先はないと見限ったのでしょう。フィレンツェでは、やはり家名が権力なのではなく、あくまで市民の支持が必要ということですね。

 

 

そして最後のシーンはコンテッシーナとエツィオの別れ。駆け落ち寸前だったんです。↓ 貴重品は運び出され、がらんとしたメディチ邸で。

コジモに利用されたのに、幸せにする、一緒に来てくれと言ってくれたエツィオ。なのに、「私の幸せより大切なことがある」とコンテッシーナはメディチ家を選びます。

 

もうほんと、エツィオとでなくてもいいからしばらく家出して、好きなことして休んでいいのよ! と言ってあげたい。

 

 

Medici- Masters of Florence