時は15世紀のイタリア・フィレンツェ。“イル・ヴェッキオ”老コジモことコジモ・デ・メディチ(リチャード・マッデン)を巡る「メディチ」シーズン1(全8話)の第1話は、「原罪」という思わせぶりなタイトルです。
イタリア RAI 1で視聴率29.9%を記録。同じ時間帯のサッカー、ユベントス戦に勝ったと話題になりました。
Cosimo era considerato l’uomo più potente della città: fu il primo dei Medici a governare Firenze. #IMedici pic.twitter.com/l0dRn4c0CK
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20歳頃のコジモです。このエピソードでは、20年前のローマでの出来事もたっぷり描かれ→20年後(=現在)につながっていきます。
シーズン通して大きなミステリー、父ジョヴァンニの死
冒頭は父ジョヴァンニ・ディ・ビッチ・デ・メディチ(ダスティン・ホフマン)のお葬式。あ、その前に。
この作品は美術や衣裳や練り上げられた脚本も役者も劇中の音楽も素晴らしくて大好きなのですが、OPだけが苦手でした。
単なる好みなんです。誰にも聞かれてないんですけど。
音楽・ヴィジュアルともに少々不安がよぎったのは事実です・・・。合わなかったらどうしよう、と。大きなプロダクションですからそんな部分もあるだろうということで進みます・・・。
葬儀のシーンでは、後にキーパーソンとなる人たちが大勢映し出されます。観直す度に発見がある部分ですね。
ジョヴァンニはブドウ畑で亡くなるのですが、毒殺だったという謎解きはシーズン通して不気味に暗いテーマのひとつ。
制作のフランク・スポトニッツは、死因が分かっていないのでドラマとして取り入れた、とインタビューで語っています。そんな脚色も大河ドラマならではですね。
で、最初に登場する主要人物たちがこちら。
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コジモの弟ロレンツォ・デ・メディチ(スチュアート・マーティン)です。
1986年スコットランド生まれで、主に英国内で活動している俳優。
陽気で要領がよくて、コジモと正反対なので衝突するかと思いきや、良き理解者で仲のいい兄弟でした(コジモはシビアですけど)。飄々として印象に残る味のある役者さんです。
こちらはコジモをサポートするマルコ・ベロ(グイド・カプリーノ)。
Marco Bello, rimarrà accanto a Cosimo durante i complotti orditi dalle nobili famiglie fiorentine. #IMedici pic.twitter.com/d0dwlCfJrC
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もう格好いいのなんの! 腕っぷしが強くて冷静で頼れる男No.1!
貧しい生まれでメディチ家に恩義を感じており、何があってもコジモを守ると決めている。汚れ仕事を引き受け、右腕として交渉役もつとめます。
イタリアでは大大人気の有名俳優さん。1974年、タオルミナ生まれ。(「副王家の一族」)
20年前、ローマでの教皇選と恋
父を思ううちにシーンは20年前へ。祈っていたのはメディチ家の礼拝堂でしょうか。ヴェッキオ宮殿やドゥオモなど、実際の歴史的建築で一大ロケを行ったらしいです。それでもイタリアではフィレンツェロケが少ないという不満の声があったようですが。
20年前、ローマへ行ったのは推薦する枢機卿を教皇にするための選挙活動でした。後のヨハネス23世ですね。ディテールは創作にせよ、20歳前後に手伝ったとするといい感じにリンクしてます。
選挙活動とは、はっきりいって買収です。神の代理人はきれい事では進みません。アヴィニョンとナポリの教会大分裂の時期です。
乗り気でなかったコジモですが、最終的に敵の弱点をつく(=脅す)という頭脳戦で勝利します。
ここはさすがでしたね。ロレンツォに比べて芸術好きでシャイなコジモですが、父は後継者の素質をしっかり見抜いていたようです。弟も後押しします。
同時にローマでの経験として描かれるのが恋人との出会い。
ドナテッロのアトリエで絵のモデルをしていたビアンカ(ミリアム・レオーネ)です。
顔も体もギリシャ彫刻のように素晴らしく美しい元ミス・イタリア。幅広く活躍しているやはりイタリアの人気女優さんです。
La cupola e altre bellezze fiorentine, venite a scoprirle tutte qui 👉 https://t.co/apP72HRcoI pic.twitter.com/KHlA7RQMzm
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メイクだけはちょっと・・・いやかなり・・・今どきの作品と思えなくて納得いきませんが・・・。
それはシャイで真面目な若者の恋ですから一直線になります。思い出としては最高に美化される悲恋になりました。身内に引き裂かれたわけですから、この後、少々性格がひねくれるのも無理ありません。もちろんビアンカの存在は創作でしょうけど、ここでドナテッロを登場させているのも嬉しいところです。
ところでこのドラマ、主要キャストはほとんど英国勢ですが、有名なイタリア人俳優が色々な役で多数登場しているそうです。イタリア映画、ドラマに興味がある方にもおすすめです。
こちら ↓ ここで登場してきたドナテッロ役は、意外にもイギリス・ブリストル出身のベン・スターでした。
Donato di Niccolò di Betto Bardi: a scuola ve l'hanno presentato come #Donatello. #IMedici pic.twitter.com/heNfOkaMXZ
— I Medici (@imediciofficial) October 20, 2016
古代ローマ以来の美術品が多く残るローマのアトリエで、ドナテッロがコジモに語ります。人間は神の似姿だ。人間の美を描けば神の美に近づける。古代ローマの美と人間の美しさを語るシーンでした。
ルネサンスですね。
今後を予感させる好きなシーンがたくさん
現代=父ジョヴァンニの死後、新たな統領(プリオーレ)の一人に選ばれるコジモ。同時に戦争が始まる、というところまでが今エピソードでした。
登場人物のキャラや関係性をきっちり描き、物語の背景を覚えさせ、テーマ性を伝えるのがドラマの第一回。てんこ盛りなのに飽きずに楽しめました。
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教皇の即位のシーンはサスペンスフルでぞくぞくしました。チーム・メディチ勢揃いです。みんな違うこと考えてそう。
このほか印象に残ったシーンでいうと、まず、父ジョヴァンニが高価な服を戒めるところ。裕福なメディチは贅沢で批判されてはいけない、目立って反感を買ってはいけないのです。
ライバル、リナルド・アルビッツィ(レックス・シャープネル)がコジモに「父君以上に父君らしい」というシーンもあります。これ今後も出てくるフレーズです。ジョヴァンニは君主にはなりたがらなかったが、実質支配者だった。謙虚なふりしてた、お前もだろ。というだけの意味ではなさそうです。
コジモがつぶやく大義のための必要悪もキーワード。コンクラーベで買収や脅迫を行ったのはバチカン御用達バンクになるため。それはすべての民に富を分け与えるため。フィレンツェのため。芸術好きの青年だったコジモですが、父からしっかり帝王学を伝授されています。
コジモは、シニョリーア(政庁)での投票に仕掛けをすることくらい躊躇しませんが、この頃はまだ悩める理想主義者というナイーブさが垣間見えます。
芸術に憧れる若い息子に父は言います。夢を実現するためには、富が必要だと。ドゥオモを作るためには資材がいる。富=力ですね。当時のコジモは、美はお金以上に尊いと信じていましたから。
#Fact: Lo sguardo di Cosimo per il Pantheon è curiosamente lo stesso delle fan per #RichardMadden.#Buongiorno da #IMedici. pic.twitter.com/rvabDheZTA
— I Medici (@imediciofficial) October 20, 2016
パンテオンで夜空を見上げるコジモ。ローマの夜はあまりに美しくて胸が締め付けられそうでした。コジモにとっても大切な思い出でしょう。
父が亡くなった後、政庁でのコジモの発言は、中世からルネサンスへと大きく変わりつつあることを象徴していました。戦争から経済へ、新しい時代を迎えるべきだと。
長くフィレンツェを支配してきた武闘派のアルビッツィ家 VS 経済によって豊かになるべきと考える新興のメディチ家。
生まれや育ちで人を差別しない、家柄や地位に左右されない。すべての者に報いるようお金を使う。それがフィレンツェの精神だと父からの教えです。
単なる理想主義ではない、でも必要悪を平然と受け入れるだけではない心の動きがタイトルの「原罪」につながるのでしょうか。キリスト教に疎いので軽々しく推測すべきではないのですが、常に選択肢はある、ではなぜその選択を? という問いかけのような気がします。
次回の第2話は、<結婚編>と<戦争編>の2回に分けてまとめました。
最後になかなかに切なかったシーンについて。
夫コジモを心配するコンテッシーナ(アナベル・スコーリー)は「あなたの負うものを一緒に支えたい。一人で背負わないで」と伝えます。しっかり者です。
対して仏頂面のコジモですが、心を全開にしてはいないものの、拒絶もしていないことが表情や手の動きから分かります。ようやく何か言おうとしたときには、返事のない夫をあきらめて妻は去ってしまった後でした。不器用ですから。
ほんと不器用な夫婦なんです。二人とも。でもこの抑制のきいた描き方、嫌いじゃないです。