カノンの海外ドラマ漂流記

気ままな海外ドラマ中心のブログです。ネタバレ記事中心です。

hulu ドラマ「メディチ」シーズン1 Ep3「疫病」PESTILENCE 感想<メディチ家の女たち>

全8回のエピソード3の感想は、まず<メディチ家の女たち>を通してファミリーを考えてみました。後編で<街を救う>編を書いてみたいと思います。

 

当時の伝染病は深刻です。ヨーロッパでは何度も黒死病が流行し、フィレンツェの人口が半分以下になったこともあったとか。

ファミリーはどう対処するのか? フィレンツェの街はどうなるのか? コジモの決断と行動が気になります。

 

 

勝気なだけじゃない賢い共同経営者、コジモの妻コンテッシーナ

結婚前からコジモの父ジョヴァンニ(ダスティン・ホフマン)に気が強い、と評価されていたコンテッシーナ・デ・バルディ(アナベル・スコーリー)。後継者コジモ・デ・メディチ(リチャード・マッデン)をしっかり支えてくれると期待していたのでしょう。

 
 
 
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コンテッシーナ・デ・バルディ・デ・メディチ(1390-1473)は大銀行家バルディ家の娘。コジモより1つ年下です。コジモが亡くなった9年後、病弱だった息子ピエロが亡くなった4年後まで生き、「メディチ」シーズン2にも登場します。孫の“豪華王”ロレンツォ・デ・メディチ(ドラマではダニエル・シャーマン)は娘をコンテッシーナと名付けました。

 

演じるのは、英国女優アナベル・スコーリー(Annabel Scholey)

 
 
 
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1984年ウエストヨークシャーのウェークフィールド生まれ。イギリス中心に舞台や映画、TVで幅広く活躍しています。ドラマ「ビーイング・ヒューマン」やローマ帝国時代の「ブリタニア」に出演。きりっと頼りがいのある雰囲気ですね。

 

史実のコンテッシーナはほとんど資料がないらしく、影響力のある女性だったとか、陽気な良妻賢母だったとか諸説あるようです。真逆です。それだけ自由に動いてくれるキャラクターになりました。実際にはコジモとの間に子供は2人。

望まない結婚でしたが(史実は不明です)、 コジモとはすでに20年以上寄り添っていて、いまや夫が不愛想だろうが返事がなかろうが動じません。

言うべきことはっきり言う賢夫人、かと思ったらそれ以上でした。

 

コジモは大切な毛織物工場をまかせるなど、コンテッシーナの経営能力を認めています。家族もみんな一目置いているし、家とビジネスの両方を取り仕切る共同経営者のような存在です。コジモは仕事ひと筋だから、ひょっとして総合的にはコンテッシーナが裏CEO?

 

実は困った時、苦しい時、コジモの話し相手はコンテッシーナ。今エピソード終盤で

も、(他の人に)君を無視するようなまねは二度とさせない、私は君を尊重しているんだとコジモは語ります。

 

それだけじゃないないでしょ、ちゃんと言ってよという表情のコンテッシーナ。やっと無口な夫が話し始めたのに、急な知らせが届いて会話は中断してしまいました。

 

結婚当初はともかく、この夫婦は冷え切った仲でも反目しているわけでもないんですよね。少しずつ信頼関係を育ててきて、それがいっそう深まったエピソードだったのですが・・・。色々あってようやく落ち着いた二人になってきたのに、終盤に大事件が起きてしまいました。

 

この動画では、アナベル・スコーリーやクリエイターのフランク・スポトニッツ、リチャード・マッデンらが「メディチの女性と結婚」について語っています。

 

コジモの息子・ピエロと結婚した可憐でまっすぐなルクレツィア

由緒ある名家の娘ルクレツィア・トルナブオーニ(1427-1482)前回、ジョヴァンニと同じ毒(ドクニンジン)に侵されながら復活し、妊娠もわかって幸せいっぱいです。

 
 
 
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ピエロとはとても仲良し。若く微笑ましいカップルです。(↑オフショットですが)

 

イタリアの女優ヴァレンティナ・ベレ(Valentina Bellèがフレッシュに演じていて、経験を重ね深みを増していく魅力的な女性像となりました。

 
 
 
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ヴァレンティナは1992年伊ヴェローナ生まれ。モデルを経てローマで演技を学び、卒業後すぐのデビューがこの役! 注目のイタリア女優の新星ですね。アントニオ・バンデラスがピカソを演じたドラマ「ジーニアス: ピカソ」(2018)にも出演しました。

 

ルクレツィア・トルナブオーニは、夫亡き後、息子(豪華王“イル・マニフィコ”と呼ばれたロレンツォ・デ・メディチ)達をしっかり育て上げた女性。芸術支援や福祉活動、ビジネスや政治面でも活躍し、コジモも認める手腕だったといいます。

Ghirlandaio - lucreziatornabuoni

ですが、今回はつらい状況となりました。

 

流産し、打ちひしがれたルクレツィアに義母コンテッシーナが付き添います。  私の役目は子供を産むことなのに・・・と悲嘆に暮れるルクレツィアにきっぱりと言います。

 

女性の役目は子供を産むことだけではないわ。夫がつらい時にそばにいて支えてあげなさい。家族に必要な存在になりなさい。私はそうした。

 

結婚20年の重みですね~。優しく慰めながら言うもんだから余計胸にしみました。

 

この時、一家はフィレンツェ市内の黒死病から別荘に避難してきていました。が、コジモの母が発病。すぐに身重のルクレツィアを気遣い部屋を用意するなど、てきぱきと指示を出したのはコンテッシーナでした。以前、男たちが家に押し入ってきたときも毅然と対処しましたね。

もう、CEO兼危機管理担当大臣と呼びたい力強さです。

 

今回のエピソードは色々な年代の出来事を取り入れたお話でしたが、コンテッシーナとルクレツィアは実際にも関係良好で、協力してロレンツォ“イル・マニフィコ”たちをサポートしたという説があるそうです。

 

わがままでも強力に家を守ってきたメディチ家のゴッドマザー

さてもう一人。シリーズ序盤で実は強烈な存在感を放っていたのがコジモとロレンツォ(スチュアート・マーティン)兄弟のママ

 ジョヴァンニと結婚したピッカルダ・ブエリ。プライドが高くはっきり物を言う女主人です。特に長男に対しての辛辣な物言いは第1回から異色でした。

 

演じるのはフランシス・バーバー(Frances Barber)。演劇界の重鎮で、英国内の映画・TVでも長年活躍している名女優。ケネス・ブラナーの「十二夜」やドラマ「ドクター・フー」「シルク」にも出演しています。

 

 

きっと結婚した時の夫ジョヴァンニは、まだまだ新進の起業家だったのでしょう。夫婦で家業を盛り立ててきた自負があるのだと思います。そして長男コジモへの厳しすぎる接し方・・・。 コジモは、新婚早々ビアンカのことをコンテッシーナに話した母に抗議しますが、両親揃ってコジモに説教して終わってしまいました。

おしどり夫婦なお二人。撮影の合間もいい雰囲気です。

 

この時、コジモが子供の頃、双子の弟がおぼれ死んだことをコジモのせいにしていまだに責めていることが明らかになります。亡くした痛みはそれほど大きかったという事なのでしょうが、さすがに耐え続けるコジモが不憫でした。

(史実では、双子の兄弟ダミアーノは生まれてすぐ亡くなっています)

 

別荘ヴィラ・デル・トレッビオでのファミリーの食事の席で、この話を切り出す母。コジモとの溝は深まるばかりと思われましたが、ついに黒死病にかかってしまいます。

死の床でようやく和解。コジモの成長を認めて、フィレンツェへ戻り家を守りなさいと諭します。自分も悪かったと謝るコジモに、私はいつだって正しいのよと嘯くピッカルダさん、あっぱれでしたね。

 

ファミリーの結束がメディチの強さだということがよく伝わってきました。

家を守り、運営する能力と判断力があり、行動をためらわないルネサンスの女性たちです。自由と独立を重んじた共和制のフィレンツェで出会って、強いチームワークで進んでいくお話ですね。優しく強い女性陣のシーンが多く、つい感情移入してしまいました。

 

コンテッシーナは、姑ピッカルダの言いたい放題にも賢く対処し、あくまでコジモをサポートします。

 

長くなったので戦争についての感想は後編に続きます。

 

 

Medici- Masters of Florence