カノンの海外ドラマ漂流記

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ドラマ「荒涼館」感想 ~ クセ者ぞろい! なサスペンス。登場人物紹介②

チャールズ・ディケンズ作「荒涼館(Bleak House)」(2005)ネタバレ感想です。

製作BBC、hulu、amazon prime video配信中。

主人公たち、メインのジャーンディス家・デッドロック家については登場人物紹介①をどうぞ。

 

19世紀半ばの英国を舞台に、いろんな階級の人たちが織りなすヒューマンドラマBBC公式サイトによると15話でしたが、現在は60分×8話構成で配信されています。

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BBC公式サイトより

ヴィクトリア朝の雰囲気を忠実に再現した濃厚なドラマです!
個性派俳優たちの演技合戦が飽きさせません。

 

「荒涼館」に引き取られたエスタは実の母と再会

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主人公といえるのは、身寄りがないけれど、賢く優しいエスタ・サマソン(アンナ・マクスウェル・マーティン)

 

スラムの少年を助けたことで天然痘に感染しますが、健気に前向きに生きてまして、ジャーンディスさん、リチャード、エイダもこれまでと同じように接してくれます。

 

↓結婚を誓ったリチャード・カーストン(パトリック・ケネディ)エイダ・クレア(キャリー・マリガン)

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隣人でもあるデッドロック家のレスタ卿の夫人(ジリアン・アンダーソン)は、結婚前にエスタを出産。死んだと聞かされていましたが、ようやく会うことができました。

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このスキャンダルを暴くと脅された夫人は、何とか隠そうしますが叶わず、亡くなってしまいました

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後半は、レスター卿の夫人の秘密が殺人事件につながります!

夫人の恋人は亡くなったホードン大尉。代書で生計を立てていたため、筆跡と2人の手紙を見つけることが秘密を解くカギ。

 

手紙を巡って、いろんな人物が攻防戦を繰り広げます! それぞれ目的が異なるのがややこしいところ。

ここに関わったキャラクターからまとめてみます。

 

■弁護士タルキングホーン(チャールズ・ダンス)

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レスター卿の顧問弁護士。夫人の秘密を暴くためには悪人と手を結ぶこともいとわない冷酷な大物弁護士。最後には、恨みを買った人物に殺されます!

 

夫人が代書屋の(つまりホードン大尉の)筆跡に気づいたことから調査を進めたタルキングホーン。

その過程で、身元を特定するためには証拠となる筆跡が必要となるため、あくどい手を使ってホードン大尉の手紙を手に入れるんです! 

 

悪徳高利貸しを利用したり、約束を平気で破ったり。
頭が良すぎて怖いのなんの! 大物悪役はやっぱりチャールズ・ダンス様の十八番ですね。

 

見どころは
●脅したりすかしたりの犯罪すれすれの悪徳弁護士っぷりがたくさん
→この人が出てくるだけで一気に空気が引き締まる、何か起こりそうなホラーに近い威圧感でした!


夫人(ジリアン・アンダーソン)との演技合戦! 
→タルキングホーンがデッドロック家に対し具体的に何を企んでいたかは明らかにされません。
が、夫人を脅迫して操るつもりなので、何度か2人だけのシーンがあります。

 

厳しく脅すタルキングホーン VS 表情を変えず威厳を持って対抗するデッドロック夫人の緊張感は見ごたえあります!

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ただ、レスター卿とのやり取りを見ていると、ちょっと鬱屈したものを感じてしまうのですね。

 

しょせんは貴族に使われる立場なわけで、ディナーの部屋も別でした。父親も仕えていたと話していました。

鬱憤が怒りに変わって、階級制度への不満がはっきり意識された時代だと思います。

このあたりの複雑な演技、さすがです!

 

 

 

 

■高利貸しスモールウィード(フィル・デイビス)

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容赦ない悪徳高利貸し! 絵にかいたようなキャラクターで、ものすごい怪演!!

 

体が悪いため(骨の病気?)輿を担がせてるんですが、大声で悪態をついてはすぐ従者を殴る、始終誰に対しても怒鳴ってばかりで狡猾で、貧しい人たちからひたすら搾り取ろうとします。

 

タルキングホーンと組んでホードン大尉の手紙をだまし取ったのもこの人。

 

演じるフィル・デイビスさん、英国の俳優・監督で、ロイヤルシェイクスピアカンパニーでスクルージも演じてます。

あっけに取られて見入ってしまうほど、とんでもない迫力キャラでした!

 

■ジョージ軍曹(ヒューゴ・スピアー)

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武道場だか射撃場を運営している元軍人。恩人でもあるホードン大尉の秘密を守ろうとしますが、借金のせいでスモールウィードに手紙を取られ、後にタルキングホーン殺害を疑われてしまいます。

 

信義に厚く正義感溢れる高潔な人物。ですが、お金がないと困ったことになるんですよね・・・。この時代は特に。

 

気の毒な老人をかくまったり、貧しい少年ジョーの最期をジャーンディス家の人々といっしょに看取ることもしました。

殺人事件では留置場に入れられますが、家族と和解しデッドロック家で新しい仕事を得、人生を立て直します。

 

演じるヒューゴ・スピアー、「マスケティアーズ」のトレヴィル隊長です!

どこかで見た顔だ・・・と悶々としながら見てしまいました。やっぱり公平で頼れる軍人キャラですね!! 

 

最初はどうからんで来るか分からなかったのですが、母親がデッドロック家の家政婦長だったり、軍隊時代の人々のことが描かれたり。

正義だけでは生きていけないけど、きっといいことあるよね、とほっとしました。

 

■ハロルド・スキムポール(ナサニエル・パーカー)

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ジャーンディス氏の友人。芸術に詳しく、滞在することも多い。

 

僕は大きな子供」「金や仕事や家族にしばられたくない」というお調子者。教養があって会話も巧みだが、人に寄生して生きていく人物です。

 

リチャード、エイダ、エスタからも金を借り(ジャーンディス氏が返す)、裕福な友人宅を転々としているらしい。

 

やがて弁護士ヴォーズルと組んでリチャードをたきつけ、裁判費用を出させます。結果的に、こいつが元でリチャードの人生は破綻しました・・・。

 

当時の詩人・評論家リー・ハントにインスピレーションを得たキャラクターとのこと。何をして食べてるか分からない芸術家気取りの文人居候、いかにもですね。

 

■バケット警部(アラン・アームストロング)

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タルキングホーンに協力する刑事

権力者と付き合いながらも、実は公平で優秀な警察官でした。

 

タルキングホーンの便宜を図ることもありますが、病人を労わったり、ジョージ軍曹の友達だったり。

 

最後は、鋭い分析でタルキングホーン殺人事件を解決

 

アラン・アームストロングさん、目も鼻ももみあげも大きい!

ほんとうに当時はこういう髭や髪型だったんだろうか? いや、こっちは幕末だけど、と思いながら濃いキャラにくぎ付けでした。

 

BBCのドラマだけでディケンズ4作品に出演、「レ・ミゼラブル」ロンドンオリジナルキャストでもある名優です。

 

■法律事務所事務員、ウィリアム・グッピー(バーン・ゴーマン)

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ジャーンディスVSジャーンディス裁判を担当する法律事務所の弁護士見習い。エスタにプロポーズ→天然痘で容貌が変わって取り下げ→再度プロポーズもふられる。

 

デッドロック夫人とエスタは親戚ではないかと気づき手紙の回収に協力するが、タルキングホーン&スモールウィードに撃退されます。

 

色んな局面でジャーンディス家・デッドロック家にからんでくる一般市民。思い込みが激しく、ずる賢く立ち回ろうとしては失敗する典型的な(?)小市民で狂言回し的役割。

 

飄々として存在感大の個性派さんですね。

「FOREVER  Dr.モーガンのNY事件簿」でのアダム役とか「そして誰もいなくなった」とか、アクの強い、裏に何かありそうなキーパーソンが得意。この人の顔を見るとワクワクします♪

 

いろんな階級・職種の登場人物がたくさん。しっかりキャラが立ってます

ところで、タルキングホーン殺害はジョージ軍曹、デッドロック夫人が疑われますが、真犯人はデッドロック夫人の元侍女でした。

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エキセントリックでひがみっぽいフランス人侍女でして、こいつをマークして、聴取の筆跡から追いつめるバケット警部、さすがでした!

 

他にもとにかくたくさんの人物が登場します。

猫好きな下宿屋の親父とか、何十羽も鳥を飼っている初老の夫人とか、エスタの友達が結婚するダンス教師父子とか。↓父のほう。

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裕福になった一般市民のためのダンス教室ですね。漫画かと思うようなキャラみたい。

 

オリバー・ツイストみたいな浮浪児ジョー。しっかり者の姉はエスタのもとで働くことになりました。

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犯罪を疑われたり、病気になっても満足な治療が受けられなかったり。

真っすぐで賢い少年だったのに、偏見や貧困の犠牲になってしまいました。

 

ジョーを助ける(ホードン大尉の雇い主でもあった)代書屋のスナグズビーさん、ジョージ軍曹の元軍隊仲間のフィルなど、善良な人も多いです。

 

~~~~~まとめ感想~~~~~

多彩なキャラクターを味わうのが楽しかったです!

 

人物造形がしっかり出来ていて、濃いキャラが揃って、あちこちで人間関係が繋がる・・・

ステレオタイプと言われる人物像は全部ディケンズが作ったんじゃないかと思うほどでした~(他を知らないだけですが)。

 

だって、この人物の数、作品の量、ものすごい創作力ですね。

ほんと物語って面白い! と思わせるストーリーテラーぶり、堪能できました。

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↑最後はエスタ&ウッドコート医師のウエディング。ジャーンディスさんに手を取られてのシーンです。

 

貴族の生活、侍女や使用人たちの世界、豊かな市民階級とそれぞれの仕事、貧民街の厳しさなど、すべてがリアルで緻密なところが面白いなあと思いました。

 

延々と続く裁判の形式主義なところ、風刺もきいてます。

 

とにかく、それぞれのキャラが濃くて興味深かったです。

  

デッドロック夫人だって世をはかなんで失意のうちに亡くなったわけじゃないですもん。強く気高く、信じることのために闘った結果だと思います。

 

タルキングホーンのような力も頭脳もある人が貴族社会に挑戦を始めたんだと思うし。←的外れかもしれませんが、素人の感想文ということで。

 

工場で豊かになった人物が選挙で対立候補を応援したことにレスター卿は怒っていました。悪意ではなく、当時の貴族の価値観では失礼なことだったんでしょう。

 

 

つまり、何というか、悪人も出てくるんですが善悪を描いているわけではなく、“その人なりの”道徳心や生き方のバリエーションがとっても豊かで惹きつけられました。

 

 

それを可能にしたのは役者の力なのかな。ドラマ万歳です。

シェイクスピアみたいに、演出や俳優によってどんどん新しい楽しみ方が生まれてくるのでしょう。

 

 

 

久しぶりにお腹いっぱいの時代劇?でした。小さなキャラも意外な絡み方をしてきますのでお見逃しなく。

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↑結婚式の会場になった新しい荒涼館。

ジャーンディス家&デッドロック家の登場人物①はこちらまで。

 

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