チャールズ・ディケンズ作「荒涼館(Bleak House)」(2005)のネタバレ感想です。
製作BBC、hulu、amazon prime video配信中。
まとめ感想は登場人物紹介②へどうぞ。
BBC公式サイトによると放映時は30分×15話(最初か最後だけ60分)だったようですが、配信は60分×8話構成。たっぷり8時間の歴史大作です!
きっちり作り込まれたセットと当時の生活を丸ごと再現した雰囲気が素敵。(少々ベタな効果音は無視して)たっぷりヴィクトリア朝にひたれます💛
ディケンズは大昔に何冊か読んだ程度でまったく詳しくないのですが、これだけ何度も映像化されているなら間違いないだろうと視聴しました。(なぜこんなに人気なのかも興味あるし)
物語自体が面白いということもあり、映像としては暗く重いイメージもありますが、リアルで展開の早い真面目な作品、という印象です。
それに、知ってる顔を見つけるのも海外ドラマの楽しみのひとつ♪
以下、概要と登場人物を通してまとめてみます。なにせ8時間と長いので・・・大雑把なまとめ&感想です。
- 【概要】19世紀半ばの英国。「荒涼館」に引き取られた少女が中心
- ■エスタ・サマソン(アンナ・マクスウェル・マーティン)
- ■ジョン・ジャーンディス(デニス・ローソン)
- ■リチャード・カーストン(パトリック・ケネディ)
- ■エイダ・クレア(キャリー・マリガン)
- ■アラン・ウッドコート医師(リチャード・ハリントン)
- ■ホノリア・デッドロック(ジリアン・アンダーソン)
- ■レスタ・デッドロック卿(ティモシー・ウェスト)
【概要】19世紀半ばの英国。「荒涼館」に引き取られた少女が中心
原作は1852~53年発表。「オリバー・ツイスト」「デビッド・コパフィールド」の後。「リトル・ドリット」「二都物語」「大いなる遺産」などはこの後になります。
豪華なお屋敷の暮らしあり、多種多様な一般市民の仕事があるかと思えば、スラムの浮浪児も登場します。
当時の社会で生きていた人たちが生き生きと描写されていて(ハッピーという意味ではない)リアルに動くところが面白いです。
長い長ーーいドラマなんですが、主なテーマはこんな感じ。
❶荒涼館の遺産を巡る人間模様
→跡継ぎ候補として呼ばれた若者たち(リチャードとエイダ)を中心に展開します。なかでもメインは、被後見人の話し相手として引き取られた少女エスタ。
なのですが、荒涼館に暮らすジャーンディス家の遺産は何年も(たぶん何十年も)続く相続争いの裁判中。この裁判に関わる人物たちがたくさん登場します。
❷生き別れた母と娘の再会
→エスタは孤児として育ちましたが、実は出生の秘密がありました。両親が判明しても幸せには暮らせません。それどころか新たなトラブルが浮上します・・・。
❸チャールズ・ダンス VS ジリアン・アンダーソン!
→個人的にはいちばん引き込まれました! 名家の秘密を巡る攻防戦、というところでしょうか。
ジリアン・アンダーソン演じるデッドロック夫人の過去が明らかになる過程で、さまざまな事件が起こります。終盤は殺人事件を捜査するミステリ風味。
秘密を抱える人物がたくさんいて、それを暴こうとする人物たちの企みはたいていお金が目的。
もちろん、それを正す勧善懲悪ドラマではありません。最後はいちおうハッピーエンドで終わりますが・・・。
それより、当時の風習や裁判や階級制度や社会制度がたくさんでてきます。
見なかったことにしたい現実や、知らなかった階級のことをのぞき見できるから人気があったのでしょうか。
↓主な登場人物を2回に分けて紹介します。とても登場人物は多いので、個人的に面白かった人中心で。
■エスタ・サマソン(アンナ・マクスウェル・マーティン)
賢く、優しく、意志の強いしっかり者。生まれて来るべきでなかった、と言われてつらい思いをしますが、育てた女性の知り合いのジョン・ジャーンディスに引き取られます。
いっしょに荒涼館に来たリチャード、エイダといっしょに、ジャーンディスさんや友人達をサポート。
中盤、看病した少年から天然痘に感染。あとが残りますけど回復します。医師のアラン・ウッドコートに恋をしますが・・・。
アンナ・マクスウェル・マーティンの演技、いいですね! ザ・美人、ではないけど抜群の存在感でした。
「ライン・オブ・デューティ」シーズン5で知りました。「そして誰もいなくなった」(2015のドラマ版)、「グッド・オーメンズ」「フランケンシュタイン・クロニクル」にも。
■ジョン・ジャーンディス(デニス・ローソン)
「荒涼館」のあるじ。遠縁の(いとこ?)リチャードとエイダを相続人候補として引き取り、いっしょに暮らします。エイダの話し相手兼ハウスキーパーとして選んだのがエスタでした。
愛と善意の人です。誰に対しても公平で、困った人を助けることに躊躇しない。相手が貴族でも浮浪児でも同じです。
後半、エスタに結婚を申し込みますが、最後は自ら身を引いてエスタとウッドワードを応援する役回り。
(Jarndyceはジャーンダイスと発音されてるみたいです)
英国ドラマでしょっちゅう見かけるデニス・ローソン。「スター・ウォーズ」シリーズのパイロット、ウェッジ・アンティリーズでも有名だそうです。
個人的には初めて知ったのは「ホーンブロワー」でした。ユアン・マクレガーの叔父さん。
■リチャード・カーストン(パトリック・ケネディ)
ジャーンディス家の被後見人。法律家、医師、軍人など何をやっても長続きしない困った青年です。性格はいいし思いやりもあるのに・・・。
裁判に勝ちさえすればすべておさまると思い込み、借金してまで財産をつぎこみます。というか、弁護士たちにしぼり取られます。しかも、勝訴したのに遺産のすべてが裁判費用として消えたことに絶望し、病状が悪化。
ジャーンディスさんに反発していましたが、最後に謝罪して受け入れられます。荒涼館に戻り、ジャーンディス、エスタ、秘かに結婚していたエイダに見守られて亡くなりました。
パトリック・ケネディは「戦火の馬」や「ボードウォーク・エンパイア」に出演。「クイーンズ・ギャンビット」では身勝手な父親役でした(顔もよく分からなった・・・)。
■エイダ・クレア(キャリー・マリガン)
ひたすら可愛くてピュアで心優しい被後見人。リチャードと恋に落ち、どんなときも受け止めて応援します。子供を身ごもったまま、リチャードをみとりました。
エスタとは親友どうし。ジャーンディスやエスタのようにリチャードを思いとどまらせようとはしませんが、心配して支えます。
キャリー・マリガン、とにかく可愛いです!! 思わず見とれてしまう。
この後、「17歳の肖像」「華麗なるギャツビー」「ウォールストリート」「ドライヴ」など。最近は「ワイルドライフ」「プロミシング・ヤング・ウーマン」と映画が続きます。
■アラン・ウッドコート医師(リチャード・ハリントン)
誠実で優秀な医師。エスタにも生活の荒んだリチャードにも誠実に接します。エスタの友達キャディが産後、体調を崩したときや少年ジョーが倒れたときも尽力してくれました。
軍医として勤務するためジャーンディス家から離れた後、帰国。エスタに結婚を申し込みます。ジョン・ジャーンディスと婚約していたエスタは断りますが、2人の気持ちを理解したジャーンディスさんはもう一つの荒涼館を新居として用意。最後は結婚式のシーンで終わりました。
ウェールズ生まれのリチャード・ハリントン、「ザ・クラウン」「ギャング・オブ・ロンドン」「刑事モース~オックスフォード事件簿(S7)」など英国中心に活動しています。
■ホノリア・デッドロック(ジリアン・アンダーソン)
荒涼館の近く、チェスニー・ウォールドに住むレスタ卿の夫人Lady Honoria Dedlock。夫を熱愛しているわけではありませんが、愛されて穏やかに暮らしています。
常に冷静で言葉数は少なく、冷たく見えるが、気に入った侍女のために便宜をはかるなど愛情深い。
結婚前に愛したホードン大尉との間にエスタを出産。愛した人とは引き離され、死産と聞かされ、娘は秘かに姉が育てていた。
ホードン大尉がロンドンで亡くなったこと、姉が育てた女性が荒涼館にいることを知り、エスタに会ってこれまでのことを打ち明けます。
しかし、当時は正式に名乗り出て母娘として会うことは許されないことでした。
貴族として知られてはいけない秘密を弁護士や悪人たちが知ったことで、家を出て失意のうちに亡くなりました。最後にエスタが探し当て、その腕のなかで息絶えます。
ジリアン・アンダーソン、感情を表に出さない貴婦人キャラクターにぴったりです! ほんの微妙な視線で悲しみや怒りを語ってくれます。張りつめた、影のある美しさに惚れ惚れしました。
ドラマの「X ファイル」は1993-2002なので、終わって3年ほどだったのですね。歴史モノではほかに「大いなる遺産」「戦争と平和」なども。
「ザ・クラウン」ではサッチャー首相でしたし、ほんとイギリス人としか思えません。
■レスタ・デッドロック卿(ティモシー・ウェスト)
美しい妻をもつレスター卿。かなり年の差はあるみたいですが。
当時の貴族の典型で、格下の階級の言動や礼儀にうるさい。市民階級に対して現代の価値観とは違う反応が傲慢に見えます。
でも根は善人なので、不当な悪行をすることはありません。
結婚前に妻が子供を産んでいたことを知らされます。名誉を重んじる家にとっては最悪のスキャンダルです。
妻は置き手紙を残して家を出、ホードン大尉の墓地で亡くなってしまいました。
が、レスタ卿は心から妻を愛していたのでした。気絶して(脳卒中でしょうか)体を悪くしますが「世間がどう思うかなんて気にしなかった」と泣きます。
夫人が思い切って話していればとも思いますが、許してもらえると思わなかった、そこまで信用できなかったのでしょう。
夫人にとっては、自分がそれほど夫を愛していないことが負い目だったのかもしれません。
演じるティモシー・ウェストは、サミュエル・ウェストのお父さん。50年以上にわたり舞台・映画・TVで活躍。一度見たら忘れ難い風貌で、いかにも尊大な役がぴったりでした。
名門LAMDAの先代学長もつとめました(現在はベネディクト・カンバーバッチ)。
・・・というところで、長くなったので次回(登場人物②)に続きます。
(登場人物、本当に多くて、でもできるだけ端折って印象に残った人だけにする予定です。)